こんにちは、ナギです。
時間も気力も限られている退職の前後、やることは「3つだけ」と言われても不安は残りますよね。手続きの期限は14日以内・20日以内と意外とタイトで、住民税にいたっては1年後に突然請求がやってきます。しかも中には、申請した人にしか働かない「知らないと確実に損をする制度」がいくつも隠れています。
私は制度を何も知らずに退職して、数十万円損してしまいました。今回の記事はあのときの自分に渡すつもりで書いていきます。
この記事を読めば、退職時に「いつまでに・どこで・何をするか」がすべてわかります。気になる項目から読んでもOKです。
全体の流れはこちら、退職前のチェックリストだけ見たい方はこちらへ。
退職後の手続き 全体マップ


ポイントは、「退職日の翌日」からカウントが始まることです。この日から会社の保険は使えなくなります(役所の言葉では「資格喪失日」と呼びますが、この記事では「退職日の翌日」で統一します)。
| やること | 期限 | 窓口 |
|---|---|---|
| 国民健康保険(国保)に入る | 退職日の翌日から14日以内 | 市区町村の役所 |
| 任意継続を選ぶ場合の申し込み | 退職日の翌日から20日以内 | 辞めた会社の健康保険(協会けんぽ等) |
| 国民年金への切り替え | 退職日の翌日から14日以内 | 市区町村の役所 |
| 住民税 | 手続き不要。ただし後で納付書が届く | ─ |
ひとつ補足です。
2024年12月から、昔ながらの紙の保険証は新しく発行されなくなりました。今はマイナ保険証(保険証として登録したマイナンバーカード)が基本で、登録していない人には「資格確認書」という書類が届く仕組みです。退職前に、自分のマイナンバーカードが保険証として登録済みか確認しておくとスムーズです。
健康保険──選び方は3ステップで決まる
退職後の健康保険は、次の3つから選びます。
- 家族の健康保険の扶養に入る
- 任意継続(辞めた会社の保険に最長2年そのまま入り続ける制度)を使う
- 国民健康保険(国保)に入る


ステップ1:家族の扶養に入れるか確認
入れるならこれが最有力です。保険料の自己負担がありません。配偶者や親の勤務先に確認してもらいましょう。
ステップ2:望まない形での退職なら「国保の軽減制度」を確認
ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。
倒産・解雇・雇い止めなど、自分から望まない形で退職した人には、国保の保険料を大きく安くする制度があります。前年の給与所得を「3割しかなかったこと」にして保険料を計算し直してくれる制度で、期間は離職日の翌日が属する月から、その翌年度末までです(月の途中で退職した場合は、退職した当月から軽減が始まります)。
ひとつ注意点があります。3割計算の対象になるのは、前年の「給与所得」だけです。副業の収入など、給与以外の所得はそのままの金額で計算されます。会社の給与が収入の中心だった人ほど、効果が大きい制度だと考えてください。
対象かどうかは、ハローワークでもらう「雇用保険受給資格者証」に書かれた退職理由の番号でわかります。なお、マイナンバーカードを使ってハローワークの手続きをした場合は、受給資格者証の代わりに「雇用保険受給資格通知」という書類が交付されます。番号の見方も、このあとの手続きも、どちらの書類でも大丈夫です。
- 対象の番号: 11・12・21・22・31・32・23・33・34
- 条件: 退職時に65歳未満であること
注目してほしいのは、33・34には「病気などのやむを得ない事情がある自己都合退職」も含まれることです。「自己都合だから関係ない」と決めつけるのはもったいない。手続きは市区町村の国保窓口に、雇用保険受給資格者証(または雇用保険受給資格通知)を持っていくだけです(例: 新宿区の案内ページ。書類の様式は自治体によって違います)。
この制度、残念ながら申請した人にしか働きません。窓口のほうから教えに来てはくれないんです。
失業手当そのものについては、失業手当と傷病手当金の記事でくわしく解説しています。


ステップ3:国保と任意継続、保険料が安い方を選ぶ
任意継続は「辞めた会社の保険を続けられる」制度ですが、在職中は会社が保険料を半分払ってくれていたのに対し、退職後は全額自己負担になります。目安は、給与明細に書かれている健康保険料の約2倍です。
ただし救済もあります。保険料の計算には上限があり、給与が高かった人ほど「国保より任意継続の方が安い」逆転が起きやすくなります(計算のもとになる金額の上限は、令和8年度は32万円)。
ここでひとつ安心材料を。
任意継続は「一度選ぶと2年間やめられない」制度ではありません。2022年1月の法改正で、本人の申し出によりいつでも脱退できるようになりました(申し出が受理された月の翌月1日でやめられます)。たとえば翌年度に国保のほうが安くなったら乗り換える、という選び方もできます(協会けんぽの資格喪失Q&A)。
任意継続の条件は「辞める日まで、継続して2ヶ月以上健康保険に入っていたこと」。ポイントは「継続して」の部分で、途中に1日でも空白期間があると通算できません。逆に、転職で間を空けずに保険が続いていれば、前の会社の期間と合わせて2ヶ月以上あればOKです(協会けんぽの加入条件ページ)。なお任意継続はあくまで健康保険だけの制度なので、次に説明する年金の切り替えは別で必要です。
年金──切り替えて、払えないなら「免除」を申請
実は私自身、うつ病で退職したとき、先ほど紹介した国保の軽減も、これから説明する年金の失業特例免除も知りませんでした。知らないまま申請せず、本来なら減らせたはずの負担をまるごと抱え込むことに。その額、合わせて数十万円。収入が途絶えた時期の自分には、忘れられないほどの痛手でした。この記事は、あのときの反省文でもあります。
切り替えの窓口は市区町村の役所
会社員は厚生年金に入っていますが、退職して次の職場が決まっていない場合は国民年金(自分で払う年金)への切り替えが必要です。退職日の翌日から14日以内に市区町村の年金窓口で手続きします。扶養している配偶者がいる場合は、配偶者の分も一緒に切り替えます。
※くわしくは日本年金機構の案内へ。
保険料は月17,920円です(令和8年度・日本年金機構)。月の途中で退職した場合は、その月の分から自分で払うことになります。
払えないときの正解は「免除申請」
無職の身に月17,920円は重いですよね。ここで一番やってはいけないのが払わずに放置すること。放置(未納)は将来の年金が減るだけでなく、事故や病気で働けなくなったときの障害年金までもらえなくなる恐れがあります。
正解は「免除」の申請です。しかも退職した人には特別ルールがあります。
この特例のすごいところはあなた自身の前年の収入を「なかったこと」にして審査してくれる点です。去年フルに働いていた人でも、免除が通る道が開けます(日本年金機構・退職者向けページ)。
ただし条件がひとつ。なかったことになるのは本人の収入だけです。同居の世帯主(親など)や配偶者に一定以上の収入があると、免除が認められない場合があります。
免除された期間も、将来の年金に一部(全額免除なら半分)は反映されます。ただしひとつだけ注意点があります。4分の3・半額・4分の1の「一部免除」になった場合は、減額されたあとの保険料をきちんと納めることが条件です。納めないとその期間は未納扱いになり、年金に反映されません。あとで余裕ができたら、10年以内なら後払い(追納)して満額に近づけることも可能です(免除制度のくわしい説明)。
免除は年金がゼロになる制度ではありません。ゼロになってしまうのは未納のほうです。
住民税──手続きは不要。でも一番の伏兵
住民税は「前の年の収入」に対してかかる税金で、会社員のときは毎月の給与から天引きされています。退職すると天引きができなくなるため、残りの払い方が退職した月によって変わります。


- 6月1日〜12月31日に退職
残りは自分で払います(納付書が届く)。希望すれば、最後の給与からまとめて天引きしてもらうよう会社に頼むことも可能 - 1月1日〜4月30日に退職
5月末までに支払われる最後の給与や退職金が残りの税額より多い場合は、頼まなくてもまとめて天引きされます。最後の手取りが想定より減るので、資金計画に織り込んでおきましょう。逆に、最後の給与等では払いきれない場合は納付書で自分で払います - 5月に退職
5月分を最後の給与から払って終わりです。残りはありません
よく「1〜5月退職はまとめて天引き」と説明されますが、正確に自動でまとめて引かれるのは1月1日〜4月30日の退職で、かつ最後の給与や退職金で残りの税額を払いきれる場合です(東京都主税局の案内)。
本当に怖いのは「翌年6月」
見落としがちなのがここです。
退職した年の収入に対する住民税は、翌年の6月に納付書として届きます。支払いは多くの自治体で年4回(6月末・8月末・10月末・1月末)。ただし納付の回数や期日は自治体によって異なるため、お住まいの自治体から届く納税通知書で必ず確認してください。1回あたりの金額は給与天引き時代の約3倍のかたまりになるため、収入が減った時期に大きな請求が重なります。
住民税は1年遅れで追いかけてきます。退職前の貯金計画には必ずこの分を入れてください!
退職後の生活費の考え方は生活防衛資金の記事、住民税そのものを軽くする方法は税金を減らす制度の記事でまとめています。




退職前チェックリスト
退職日が決まったら、上から順に確認してください。
- 退職理由の番号を確認する(会社都合・病気なら、国保軽減と失業手当の条件が大きく変わる)
- マイナンバーカードが保険証として登録済みか確認する
- 健康保険を決める
扶養 → 国保(軽減が使えるか)→ 任意継続の順に保険料を比較(期限は14〜20日以内) - 年金を切り替える(14日以内)。払えないなら、同じ窓口で失業特例の免除を申請する
- 住民税の残りの払い方を退職月から把握し、翌年6月に届く分のお金を確保する
医療費が心配な人は、高額療養費制度の記事も退職前に読んでおくと安心です。


まとめ
退職後の手続きは、健康保険(14〜20日以内)・年金(14日以内)・住民税(手続き不要、ただし翌年に請求)の3本柱です。そして大事なのは、国保の軽減も年金の免除も、申請しなければ1円も安くならないこと。制度は、書類を出した人にだけ働きます。今回の記事のチェックリストを上から順に潰していけば、「知らなかった」による損はほぼ防げます。
私は全部あとから知って、制度の恩恵を受ける機会を失ってしまいました。だからこそ辞める前の今、この記事を読んでいるあなたは本当にすばらしいです。手続きはひとつずつこなせば大丈夫。一緒に不安を解消していきましょう!
【免責事項】
本記事は2026年7月時点の情報に基づいて作成しています。社会保険・税制は法改正により変更される場合があります。国民健康保険の保険料率・軽減制度の運用・申請様式は自治体によって異なり、健康保険組合の任意継続の取り扱いは各組合の規約により協会けんぽと異なる場合があります。また、免除・軽減の可否は世帯構成や収入状況など個別の条件によって判断が分かれます。実際の手続きの際は、お住まいの市区町村・年金事務所・加入している健康保険組合等の公式情報を必ずご確認ください。



